しみず小児歯科のブログ
〜歯科医がお口のことを自由気ままに書いてみた〜
研究

反対咬合にリスクはあるのか?

歯の数を維持することは、「食べる」・「話す」を機能させるだけでなく、

全身の健康や生活の質を保つことに大きく影響します。

例えば、歯の喪失や噛む機能の低下が認知症のリスクを高めることが明らかにされています。

健康的な老後を送ることを狙ったお馴染み8020運動を邪魔する歯を失う原因は

主に虫歯歯周病と言われています。

歯の喪失に噛み合わせがどの程度関わっているか、歯医者としては、噛み合わせが悪いと歯がグラついて歯周病になって最後に抜けちゃうよ、くらいのことは言いますが、実際にどのような噛み合わせが歯数維持に悪影響をどのくらい与えているかは不明でした。

 

2021年に香川県の歯科開業医が小児歯科臨床という雑誌に掲載した報告によると、下顎前突の80歳以上の人には20本以上歯が残っている人は一人もいませんでした。

サンプル数がそれほど多くはなかったので、へー!そうなんだ!でしたが、今年1月になって東北大が40歳以上の17,349人(*1)を対象にした調査結果を報告しました。

調査は前歯を観察して、適切な咬合・反対咬合・開咬に分類しています。出っ歯は水平的な開咬なので開咬分類されています。

それによると、反対咬合の人では歯が20本未満であるリスクは1.48倍でした。また、開咬の場合のリスクは0.43でした。開咬の人には朗報です。

あくまでこの報告は調査結果なので反対咬合と歯の喪失の因果関係は明確になっていません。もちろん開咬の人が歯を維持できている理由も分かっていません。

さらに、2月になって反対咬合の人に追い討ちをかける論文がまたも東北大から発表されました。今回は前歯を観察した調査ではなく上下の顎の関係も見て反対咬合と判断したものです。

調査結果は以下のとおりです。

反対咬合の人たちは噛んだ時に脳血流量が正常の噛み合わせの人に比べて半分程度で、しかも、脳血流量と認知機能は相関していて、脳血流量が低下すると認知機能も低下していました。高齢者になるまで反対咬合の人には認知症が多くなるということです。

酸素や栄養が脳へ十分に行き届かなくなって認知機能が低下するようです。

論文の最後に、矯正治療が歯の喪失予防や健康寿命の延伸につながる可能性が示されましたが、反対咬合の人に対して直ちに治療を促したり、不安をあおったりすることを目的としたものではない、と記してありました。反対咬合といっても、どの程度か、何が原因か、今の成長段階はどこにいるのかなど治療に与える因子はたくさんあるので、当然このような後書きになりますね。

 

*1:東北メディカルメガバンク計画に参加した人たちです。東北メディカルメガバンクは2011年の東日本大震災から創造的な復興を成し遂げるために立ち上げられた機構です。地域医療の支援を行うと共に、地域医療情報連携基盤の整備、大規模な調査をもとにしたゲノムコホート研究などを行っています