しみず小児歯科のブログ
〜歯科医がお口のことを自由気ままに書いてみた〜
小児

お口の中の黒い色素の話  ー小児期までの口腔内の色素沈着についてー

黒っぽい歯茎や急に見つけたホクロは何か不安にさせるものがあるようです。

黒って健康にはあまりイメージ良くないかもしれません。

今回は小児期までの口腔内での黒い色素沈着の話です。

大人はまた別の話ということで今回はカットします。

① 生理的色素沈着

歯茎が茶色、あるいは黒色の帯状に着色しているケースです。

薄い褐色から濃い褐色・黒まで幅があり、明度・彩度もいろいろです。

歯茎が最も一般的ですが、他にも頬粘膜、唇、口蓋に出ることがあります。

無害ですし、放っておいても大丈夫です。

色が気になるようでしたら、お年頃になってからレーザー照射すると消えます。

黒色色素であるメラニンを作るメラノサイトという細胞が活発に働くことに起因しています。

審美性に難ありですが、メラノサイトは過剰な光の吸収に役立ち紫外線を遮る、とか、紫外線による体細胞の損傷を防ぐ、という役目があります。

肌の色が濃い人に多く見られるとか、喫煙、ホルモン変化などの要因が関与している場合には色素の強度が増加するかもと言われていますが、詳しくはまだよく分かっていません。

タバコを吸わない人も喫煙者との同居年数が長いほど口腔粘膜の色素沈着の発生率が増加しているという調査報告はあります。タバコによる色素沈着は悪性化はしませんが、気持ちいいものではないですね。

② 色素性母斑

メラノサイトが過剰に増殖してポコッとやや膨らんだ”ほくろ”状の色素沈着です。

口腔内では珍しいものですが、もっと稀な悪性化するものとの鑑別が必要です。

5mm以下だったら歯科医または医療機関による定期的なモニタリングが推奨されています。

連続写真撮影して経過観察です。

悪性化を考えて除去しておいた方がいいと言う口腔外科の先生は多いです。

5mm以上、あるいは、境界の不規則性、不均一な色素、色が変化した、潰瘍化(上皮が欠損し下の組織が見えている状態)、その他の疑わしい特徴がある場合は大きさにかかわらず念のために直ぐに検査した方がいいです。

③ 先天性原発性慢性副腎皮質機能低下症

後天性の場合はアジソン病と言います。先天性は非常に稀ですが小児期に発症がみられます。

初期の特異的な症状として生理的色素沈着の様な変化が90%以上の患者に見られるようです。

生理的色素沈着は全くの無害ですから鑑別は難しくないでしょう。

④ ポイツ・ジェガース症候群

乳児期から消化管にポリープが多発する病気です。これも稀な病気です。

唇や口の周りの皮膚に多数の濃いソバカスに似た色素沈着が4~5歳の幼少期や思春期に現れます。

⑤ 外因性色素沈着

薬や金属などがが皮膚や全身に取り込まれることによって起こります。

患者さんが成人の場合ですと歯科医は銀歯や被せ物の芯に使われている金属が原因で青く刺青のように着色した歯茎をよく見にしますが、小児ではまず起こらないでしょうね。