矯正治療を行う前に必ず撮るX線写真、それは側方頭部X線規格写真です。
歯医者はセファロと言ってます。
世界共通の規格ものなので平均的理想像と比較したり、成長過程を観察して治療計画に広く利用されています。治療目標設定に欠かせないアイテムです。
顔を含む頭部の理論的な測定を行なった最も古い記録はレオナルド・ダ・ヴィンチが残しています。
彼は見えるものを幾何学的に理論づけようと探求していました。分割する線をいくつも使って頭部を小さな単位に区分して観察しています。
おまけ:頭部解剖のついでに歯の素描もあります。おそらく歯の詳細を描いた最初の人物もダ・ヴィンチ!! ダ・ヴィンチ人体解剖図は現在のものより正確だったという記事も最近ありました。
次に記録を残しているのはドイツの巨匠デューラーです。
頭部測定に関する本を出版しています(1528年)。人を含めた自然を忠実に再現することはダ・ヴィンチに触発されたものだとも言われています。
このような動きがルネサンスから始まったのはこの時代の背景を考えれば然もありなんって感じです。
彼の研究は絵画芸術には影響を与えましたが、自然科学分野が頭部を計測し始めるのはまだ先の事となります。
デューラーが亡くなって100年後に哲学でお馴染みのデカルトがXY座標によって位置を表すことができることを発見します。これは計測にとって便利アイテムです。
その頃には、比較解剖学者が現れます。頭蓋骨の特定の場所の長さ・角度などを調べました。
比較といっても、骨格の異常を診断するものではありません。ヒトが動物とどのように違うのか、なぜ違うのか、それを探るためにサルと比較したりしました。
また、人種間の区別にも関心がありました。いろんな人種を調査した結果、最も美しいのはギリシア彫刻だった、と言ったのもこの時代です。今では問題発言ですが、とにかく計測項目は今日のセファロ分析の素となっています。
比較解剖学者の代表的学者オランダのカンパーが亡くなって約100年後の1895年にレントゲンがX線を発見しました。
そして、1910年代から医学に応用されるようになります。1920年代には十分な透視力をもつX線に必要な電圧を供給できるようになり、1931年にブロードベントという人が側方頭部X線規格写真の設計をしました。
彼は顎の骨が成長と共にどのように変化していくかを研究目的としていました。
骨格の形態を特徴付けて矯正の診断に情報提供できるのではと考え始めたのは1950年代になってからです。日本人の特徴を捉えようとする研究も50年代から始まります。
1970年代になると成長予測としてセファロが活用されます。このような変遷を経てセファロの解析方法は完成しました。
ところが科学の進歩は止まりません。今世紀になって、より多くの情報とより少ない放射線という理想的な組み合わせの3Dスキャナーが登場します。
顎のあらゆる方向からの計測のみならず鼻からの気道も正確に観察できるようになるので、歯列不正の原因の究明に役立つであろうし、どのような矯正装置が適切かを判断する材料にもなり得ます。
3Dの測定方法が確立されることを期待しています!