児童のレントゲン写真を撮ったとき、
ときどき蕾の形をした歯の赤ちゃんである歯胚が見つからないときがあります。
親知らずが写ってないときはラッキーだねって喜べますが、
それ以外の場合は “さてこれからどうするか”の長期管理を提案します。
乳歯は上下10本ずつで計20本、
永久歯は上下それぞれ14本で計28本(+親知らず4本)
生えることになっているのですが、なかには1、2本少ない方がいらっしゃいます。
もともと“歯がない”ということで先天性欠如と言います。
先天性欠如の発症率は乳歯では1%以下です。
永久歯になると8〜10%も認められています。
統計的には男女比に差はないのですが、どの調査でも女性の方が多くなっています。
先天性欠如は歯数異常として扱われているのですが、10%もあったら異常と言えるのか?
甚だ疑問ではあります。
とにかく、珍しいことではありません。
乳歯の先天性欠如発症率がとても低いので、これから永久歯のケースをお話します。
どの歯で起こりやすいかというと、
3割くらいが第二小臼歯(前から数えて5番目の歯です)、
次が上下の側切歯(前から2番目の歯です)で、それぞれ2割ほどです。
ほとんどの場合、欠如は1〜2本です。
1%以下の稀なケースとして6本以上“ない”こともあります。
原因は遺伝的要因、環境的要因が考えられていますが、未だ解明されていません。
例えばよく判っていないこととして、
歯の数が少ない子供では歯のサイズが小さく歯の発達スピードも遅いと報告されていますが、歯の少なさと歯のサイズや顎の大きさとは関係がなかったという報告もあります。
ただ、縄文人、中世、近世の人たちと現代人を比べると親知らずが時代と共にだんだんと生えてこなくなってきていることから、顎の後ろの方が小さくなってきているんじゃないかという終末部減少理論と、後ろの方の歯数の減少は遺伝性という点で合致しているという研究者もいます。
環境的要因として、感染、外傷、薬物などが挙げられます。外傷は予測不可能なので横に置いといて、感染は未然に防ぐことができます。
例えば、第二小臼歯は3歳くらいから骨の中で姿を現わし始めるのですが、その時にその場所に大きな膿が停滞していたら永久歯がつくるのを止めてしまうかもしれません。
でも、乳歯に大きな虫歯ができて腫れてしまってもキチンと治療していれば大丈夫です。
永久歯がないときにまず、その代わりとなる乳歯があるか、その乳歯は一生あり続けることは可能かが問題となります。
永久歯への生え変わりは、何かのきっかけで乳歯の根っこを溶かす細胞が現われ、根っこが短くなって抜ける頃には永久歯がどんどん生えてきて置き換わるのです。
何のきっかけが乳歯の根っこを溶かす細胞の出現のサインか分かっていないので、後続の永久歯がなくてもその細胞が出現して、乳歯の根っこが溶け出して抜けてしまう可能性があるのです。
それに乳歯の根っこは永久歯に比べて短く細いので、噛むなどの外からの力に対して永久歯より弱いかもしれません。
そこで、乳歯を残すことにしたなら、定期的な噛み合わせのチェックは必要となります。
代わりの乳歯がない、あるいは、途中でなくなってしまった場合は、歯科矯正できれいに並べるか、代わりの歯をつくる(被せ物を利用したり、インプラントなど)ことになります。
隙間があまり大きくなくて噛み合わせも安定していたら無理に治療する必要はありませんが、隙間が大きくて隣の歯が傾いてきて噛み合わせに狂いが生じたり、前歯の隙間が大きくて目立ってしまうこともあります。
まだ、顎の成長途中で歯の欠如が分かったら、将来どのような歯並びにするか終着点を決めて長期的な治療計画を立てた方がいいでしょう。
欠如歯があると、顎の骨が小さかったり、左右の大きさが異なったりすることもあります。
その場合は、上下の顎を理想的な状態に近づけるために矯正治療で骨を整えて歯をきれいに並べていきます。
治療方針はどのくらいの生え変わりの時期にいるのか、もう成長が完了しているかによって左右されます。
小・中学生くらいですと、レントゲン写真を取らないと欠如歯があるか分かりにくいものです。
なかなか生え替わらないんだよねってときは一度レントゲン写真を撮ってみるといいと思います。
成人の方の中には永久歯だと思っていたら実は乳歯だったってことがあるかもしれませんね。