前回は
ミュータンスは確かに虫歯をつくるけれど、ミュータンスが活躍してしまうまでほっといたことが虫歯の原因なのだというお話をしました。
まるで凶悪犯は許せないがそんな凶悪犯を生んだ社会が悪いんだ、と言うTVのコメンテーターのようですね。
今回は、虫歯予防のお話です。
お口の中は、細菌を暴れ放題にしとくほど無抵抗ではありません。歯垢中の細菌が酸をつくっても唾液が中和してくれます。
唾液は緩衝能という優れものの能力を持っています。酸を中性に、アルカリも中性に。
しかし、歯垢が厚くなると唾液が中まで浸透できなくなります。唾液に期待できるのは浅い歯垢までです。
(↑チェコのプラハの歯ブラシ)
次に、常在菌の中にはアンモニアをつくる細菌がいます。
アンモニアはアルカリなので酸を中和してくれます。唾液の中にはアンモニアの原料となる尿素やアミンが含まれており、細菌はこれらを利用しているのです。
さらに、バイオフィルム中にもアンモニアの原料があります。
唾液中のアンモニア原料量は個人差が大きいので、これが虫歯になりにくい人となりやすい人を分ける水嶺になっているかもしれません。
(酸をつくる細菌は常在菌の一部で、すべての常在菌が酸をつくるわけではないし、いろんなものをつくりだしているのです)
口の常在菌をゼロにしてしまうと虫歯からは解放されるかもしれませんが、免疫や消化器系などが狂ってくる可能性もあるので、増えさせないように仲良く付き合っていけば、彼らはお口に害を及ぼしません。
それを彼らの好き勝手にしておいてしまうと歯や歯肉がダメージを受け、さらに放っておくと虫歯や歯周病にまで至ります。
(↑オーストリアのウィーンの歯ブラシ)
さて、どの程度に歯にひっついている細菌を減らして常在菌と仲良くするか?
先ず、歯ブラシで歯磨きを丁寧に行います。
↑これは意外と難しい(前回号の「歯みがき その2」をご参照ください)。
それは、奥歯の溝が深いとか、歯と歯の間に歯ブラシが入りにくいとかがあって、歯垢を完全に取りきるのは歯医者や歯科衛生士に指導を受けて練習した方がいい人が結構います。
(みんながみんな歯と歯の間に隙間があってツルンとした歯だったらよかったんですが、、)
歯ブラシを補助してくれるのがデンタルフロスです。
(↑バルセロナの薬局で購入したデンタルフロス)
デンタルフロスは歯と歯の間の歯垢や汚れをキレイに取り除くことができます。フロスも案外難しいと感じる方は歯科衛生士さんにやり方について相談されるといいですね。
ちなみに、アメリカでは歯周病が寿命を縮めるっていうんで、その歯周病の原因となる歯と歯の間の歯垢やまだ柔らかい歯石をフロスで取ることを推奨しています。
“Floss or Die”という標語があるくらいで、6割以上の人たちが毎日フロスをしています。
次に、フッ素です。
フッ素は殺菌作用があって細菌の増殖を防いでくれます。
それから、酸で溶けた歯の成分を元に戻すことを助けてくれます。
歯磨き粉に含まれているフッ素の量で十分に虫歯予防してくれるのですが、口の中に低濃度のフッ素が長くあることが大切なので、歯磨き後は水ですすぎ過ぎないようにしましょう。
すすぎは10mlくらいの水で十分と言われていますが、まあほどほどに。
それから、歯磨き粉のフッ素濃度が高い方が口に残ってくれるフッ素の量が増えます。
ついでの話で、フッ素は歯を強くしてくれるという説がありますが、これは試験管の中だけの話で実際の口の中で少しでも歯が固くなったとしても残念ながらそれは虫歯予防効果が期待できません。
最後に、食生活習慣です。
日本人よりずっと砂糖を摂っている欧米人の方が虫歯が少ないことから糖分の量と虫歯は関係性が薄いようです。
統計的に虫歯と糖分の間に関係があったのは摂取頻度でした。お菓子の間食回数が多いほど虫歯になりやすいということです。
スポーツドリンクや炭酸飲料水も砂糖がたっぷり入っているから間食に含まれます。
一日に摂る糖分の量を減らさなくても大丈夫ですが(糖尿の場合はまた別の話です)、常にちびちびと飲んだり食べたりは危険です。
ジュースを飲んだりお菓子を食べる回数を減らしましょう。
「歯をキレイにしよう、フッ素を利用しよう、食生活に気をつけよう」
この3本立てを毎日続けることが虫歯予防に直結します。
戦後の昭和30年代から比べると今の虫歯は大激減しています。←これに満足してはいけませんが
激減の理由はフッ素だろうと言われていますが、フッ素を利用していない乳幼児の虫歯も減っているのです。
これは我が子を虫歯から守ろうとお母さんお父さんが一生懸命にやってきた成果だと思います。
良い習慣を継続し、さらに次の世代に伝えていきましょう!
ポイント:お口の常在菌とは上手に付き合うことができます。そんなに難しいことではありません。でも、悪い歯垢にしたら危険ですよ。