しみず小児歯科のブログ
〜歯科医がお口のことを自由気ままに書いてみた〜
小児

食事の食べ方で変わる?!エネルギー消費量

今月、スポーツ庁が公表した

『令和3年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査』によると、

小学生・中学生ともに、前回令和元年度調査より体力が大幅に低下していることが明らかになりました。

 

コロナ禍によって、運動の機会が減少して体力低下し、さらに肥満児童が増えているようです。

 

小児期の肥満がそのまま生活習慣として定着してしまうと、思春期の、さらに成人の肥満へ移行しやすくなり、悪いことに肥満は糖尿病や高血圧などの原因となります。

大人になってから肥満を解消しようとしてもなかなか難しいものです。

 

肥満は飲食物から摂取したエネルギーを消費しきれず、脂肪として蓄えすぎてしまうことから起こります。

 

摂ったエネルギーは

呼吸や心臓など生命を維持するために、

日常の活動や運動で、

飲食物を消化・運搬・吸収するときにそれぞれ使います。

減量するには、②の適切な運動を継続する、③の消費量を増やすことが必要です。

 

今日は③の「食事の食べ方で消費エネルギーが変わる」というお話です。

 

 

ゆっくり食べると③の食後のエネルギー消費量が増加します(東工大の研究グループ 2015年)。

ゆっくり食べると消化・吸収活動が活発になってエネルギー消費量が高くなったようです。

 

ガムでたくさん噛んでもエネルギー消費量は高くならなかったので、エネルギー消費量を増やすには噛むだけではなく多様な食べ物をゆっくりしっかり噛んで飲み込むことが必要ということです。

 

早稲田大の研究グループ(2017年)も食べる速さが早く、飲み込むまでの噛む回数が少ないほど、肥満傾向になると報告しています。

その理由として

1)早食いが過食をもたらしエネルギーを取りすぎる

2)過食でなくても早食いは③のエネルギー消費量を減らす

以上が、早食いが体重増加をもたらす要因として考えられています。

 

また、固形の食べ物ではない飲み物を用いた際も、同様の現象が起こりました(早稲田大の研究グループ 2021年)。

 

固形物のときと同様に30回噛んでから飲み込むと③のエネルギー消費量が増えます。

 

昔から言われてきた「牛乳は噛んで飲め」はお腹を壊さないように!を念頭に置いたものでしたが、エネルギー消費量にも関係していたのですね。

 

でも、飲み物であっても、ゆっくり味わい、よく噛んで摂取することは、肥満を防ぐと言われても、飲み物を噛んで飲むことはまず無いと思うけど・・・

(ビールを一口毎に30回も噛んでたら美味しくは無いだろうな)

 

通常の食事では摂取エネルギーの約10%を消費します。

トレーニングで筋肉量が多い、毎日の軽い運動習慣がある、エネルギー消費量は朝が最高で深夜が最低になるので朝食をしっかり食べる

↑以上の生活習慣を獲得することが肥満の予防、あるいは、肥満からの改善の一助になるようです。

 

ところで、ガムを噛んだだけでは唾液は出てもエネルギー消費には関与していなかったという結果になりましたが、

唾液は噛むほどに分泌され、消化を助けるのみならず口腔機能の維持や味覚・免疫に関わっているし、それから噛むことは筋肉を鍛え、それによって骨の発育を促しますから、

エネルギー消費のみならず唾液分泌と成長促進という観点からも

やはりしっかりゆっくりとたくさん噛むことは大事ですね。