しみず小児歯科のブログ
〜歯科医がお口のことを自由気ままに書いてみた〜
矯正

金属アレルギー

プロローグ1

歯形をコンピュータに取り込んで作成するCAD/CAM冠(セラミックとプラスチックを合わせたもの)。

非金属の白い被せ物です。

2014年から小臼歯(犬歯の後ろの歯)にCAD/CAM冠が保険適用になって、さらに2017年から奥歯に、2020年からは前歯に保険が適用されるようになってきました。

条件付きですが、その条件は金属アレルギーがあると緩くなります。

 

プロローグ2

最近、歯に直接つける矯正装置(ブラケット)はセラミックやプラスチックなどの非金属が主流になってきましたが、それでも金属は依然として使われ続けています。

特殊な合金を使っているので、これらに替わる非金属はなかなか出てきません。

それで気になるのが金属アレルギーですが、幸いなことに未だ出会ったことがありません。

 

ということで、今回は最近の金属アレルギー事情です。

 

金属アレルギーの症状は、

皮膚に赤いブツブツ、腫れ、かゆみ。そこが傷つくと炎症を起こして、発熱や全身がだるくなったりします。

口の中では、口内炎の様にただれて赤く腫れたり、歯茎が白く変わったりすることもあります。舌のビリビリ感や何か重い感じを呈するなど症状は様々です。

 

診断方法は、パッチテストです。

これはアレルギーを起こさせるテストなので苦痛を伴うし、金属に対してさらに過敏にさせてしまう恐れがあるので、オススメのテストではありません。

やらない方がいいでしょう。ということで今のところこれといった診断方法は残念ながらありません。

 

治療法は、皮膚の場合ですとステロイドの投与です。

これは一定の効果があるので、これでOKとされています。ステロイド以上の研究は進んでいません。

口腔内の場合は、金属を取り除いて非金属に変える、それのみです。

予防法も同様に金属に接しない生活を送ることを心がける、それ以外にないのが現状です。

 

口腔内の金属アレルギーの症状・診断・治療法にいい話がなかったので、

最近のCAD/CAM冠保険適用は金属アレルギーの患者さんには朗報でした。

 

 

では、金属アレルギーをもうちょっと掘り下げてきます。

 

金属アレルギーは同じアレルギー仲間の花粉症やバセドー病などとちょっと違う反応をしています。

アレルギーは4つに分類されているのですが、花粉症やバセドー病が入る1〜3型は抗原と抗体の反応で起きます。4型の金属アレルギーはそもそも抗原がないし、抗体も関わっていないのです。

金属は花粉やハウスダストのような抗原ではないのです。

銀歯から溶け出した金属は口の中にあるタンパク質(おそらく口腔内細菌由来ではと考えられています)と結合して、それが抗原として機能しているのです。

 

変なヤツが来た!と反応する抗原提示細胞を介して抗体ではなくT細胞が出てきてアレルギー反応を引き起こします。

 

T細胞にはウイルス感染細胞や癌細胞を殺傷してくれたり、免疫の調整を司ったりと様々な種類があるのですが、この金属と結合したタンパク質に反応するT細胞は病原性を有しており周りに迷惑をかけてます。

 

金属アレルギーの反応中で解ってきたことは炎症をさせる物質を出すT細胞が大きな役目を果たしていることですので、これをもっと解明できれば診断や治療・予防への道は開かれるはずです。

 

T細胞は10億×10億通りの抗原(金属アレルギーの場合は金属ータンパク質結合体)に対応できると言われています。

金属アレルギー患者さんのケースでは、10億×10億通り中のどれが反応しているかを調べることができれば正確な診断ができます。

また、アレルギーを起こす金属の溶出量も調べることが可能になれば新しい金属の開発ができます。

 

歯の被せ物やインプラント以外にも外科手術で金属は使われています。

金属を使わないのも一つの方法ですし、アレルギーを起こさせない金属の開発も相当に意義がありそうです。

金属は代替品に比べて弾力性や伸縮性の調整、加工のしやすさなどメリットがたくさんあります。

この特性を維持したままで見た目が良くなったら最高なんですが。