しみず小児歯科のブログ
〜歯科医がお口のことを自由気ままに書いてみた〜
衛生

虫歯を防ぐ唾液のお話

人の体の至る所でエネルギーは消費されますが、

エネルギーを取り込む唯一の窓口はです。

は健康に生きていく上で最も重要な器官の一つです。

ところが、蒸し暑いのにマスクして、ちょっと運動しただけで苦しくなって口呼吸

口呼吸でお口はカラカラでは健康が危うい!

実は、口の健康は唾液次第。

 

・デンプンを分解する消化酵素を含む飲み込みをスムーズにしてくれる

・抗菌作用がある

・抗ウイルス作用もある

・お口内側の粘膜や舌を化学的刺激や物理的衝撃から保護してくれる

・虫歯から守ってくれる

など、唾液はたくさん健康に貢献しています。

 

Contents

今回は虫歯を防ぐ唾液についてのお話です。

 

口腔内のある菌たちが糖を分解して酸を作り出す細菌だが、

歯の表面化のカルシウムなどが溶け出すーこれを「脱灰」と言います。

脱灰が繰り返されるとついには歯の表面に穴が!!!

虫歯です。

これを抑制するのが唾液・・・

まず、酸に関して

唾液には酸を中和する緩衝作用(かんしょうさよう)があります。

昔々、大学祭で「コーラに魚の骨を入れてると骨が溶ける」という学生の出し物に、

口の中では唾液の緩衝作用で一瞬でコーラは中和されるので一般の人に誤解を与えるような展示はやめなさいと教授がクレームを入れた!なんてことがありました。

 

脱灰に関して

脱灰に関しては、唾液中に溶け出したカルシウムなどは酸がなくなれば歯に戻ってきます。

きれいに歯磨きができていれば、プラスマイナスゼロで現状維持できます。

フッ素に関して

フッ素は溶け出した成分が歯に戻ってくるのを手助けします。

それから、殺菌効果もフッ素に期待できます。

従来、虫歯予防に対するフッ素の働きは「歯を硬くすること」でしたが、

実際に口の中ではなかなか硬くなりにくいし、硬くても虫歯になる!ということで、この説は今では否定的な考えがほとんどです。

 

たまに誤解されてるんですが、噛んでいるときに出る唾液の量と虫歯には全く関連性がありません。

 

しかし、寝ている時は唾液の分泌量が下がるので、さすがに唾液がまったくない、

あるいは、極小量では緩衝作用にも影響があるので、虫歯になりやすいです。

要注意です!

寝る前にきちんと歯磨きしましょう。

 

さらに、お口の中は一様に唾液が流れているのではなく、

唾液が溜まりやすいところよく流れるところがあります。

 

唾液の流れが悪いところは上の前歯です。だから、磨き残しがあると虫歯になりやすい。

ここは乳幼児で最も虫歯が多い場所です。

逆手に取って、寝る前に低濃度フッ素を上顎前歯の上(上唇の内側)に置いておくと長時間フッ素がお口を守ってくれます。

 

また、年を取るにしたがい唾液が減り、磨き残しがあると虫歯の危険性が高まります。

それから、唾液が減少すると味覚障害も起きやすくなります。

 

対策として「旨味成分スープで唾液が回復」というのがあります。

料理用乾燥昆布を用いた薄口昆布だしを一日10回じっくり口に含ませると、

唾液が分泌され味覚障害も回復するようです。(笹野高嗣東北大名誉教授)。

 

今回は、サクッと唾液の話でした。