しみず小児歯科のブログ
〜歯科医がお口のことを自由気ままに書いてみた〜
小児

指しゃぶり

赤ちゃんや幼児によく見られる親指やそれ以外の指、あるいは

毛布やタオルを吸う行動は「非栄養的吸引習慣」と総称されています。

 

2歳を過ぎたあたりから徐々にこの習慣は減っていき、一般に3歳を過ぎるとどんどん減少し、

5歳ではほとんど見られなくなります。

 

3歳児検診に行くと「この子、まだ指をしゃぶっているんですよ」と話されるお母さんがよくいらっしゃいます。

指の吸引が歯の傾きや骨の成長に変化を引き起こす可能性があって、この先、歯並びに影響が出てくるのではないかと心配になるからでしょう。

 

指しゃぶりが歯並びの重症度に影響を与える要素は次の3つです。

①習慣の期間

②1日当たりの頻度

③吸引の力

3つが合わさると歯並びに悪影響を及ぼす可能性が大きくなります。

1つだけなら、それほど影響はないと考えられています。

 

 

では、次に指しゃぶりによる不正咬合の例を挙げます。

強い指しゃぶりを続けていると、このようになることもあるということです。

①上顎前歯の唇側傾斜

歯が出っ歯になる

②上顎骨の前方拡大

上顎が前に突き出て顎そのものが出っ歯になる

 

③下顎前歯の舌側傾斜

下顎の前歯が内側に倒れて上の前歯と水平的に距離ができてしまう

 

④吸引時の頬の筋肉の収縮により上顎の狭窄

指の吸い上げによって頬がすぼまって上顎の幅が狭くなる

 

⑤開咬

噛んだ時に上と下の歯の間に隙間ができて、食べ物が噛めなくなる

 

⑥開咬により舌の低位

自然と歯の上下間の隙間に舌を押し込むので、本来は上顎にひっついている舌は下がった状態を維持することになる。すると、舌の圧がなくなった上顎は狭くなってしまう。

 

⑦交叉咬合

指の入れ方によっては上の歯が内側に、下の歯が外側に倒れて部分的に反対の噛み合わせになることもあります。

 

⑧下顎の偏位

指しゃぶりで歯が移動して本来とは違う場所で上下の歯が当たるようになると、カチッと噛めないので顎をズラして噛むようになります。また、顎が左右非対称になってしまうと下顎をズラして噛むようになります。

3歳を過ぎてもしつこい指しゃぶりをしているお子さんをお持ちの親御さんには最も関心の高い“止めさせる方法”ですが、

一筋縄では行かない場合はいろいろと組み合わせたりしてみるのもいいと思います。

 

以下に列挙したものはもう何十年も前から言われているものです。

ピタッと止まることもあれば、なかなか手強い指しゃぶりもあります。

焦らずじっくり付き合ってください。

 

*カウンセリング

まず、なぜ指しゃぶりは良くないか優しく言って聞かせる。

子供ながらに指しゃぶりの理由を言うことがあります。そんなときは理解してあげて一緒に対処方法を考えましょう。

眠くなると指しゃぶりする場合は絵本の読み聞かせをする。

指しゃぶりしそうなときにはスキンシップ。

手を握りながら添い寝する。

 

*報酬付カレンダー

夜、寝る前に指しゃぶりしなかったらカレンダーにシールを貼って、何枚か連続で貼れたら前もって約束したご褒美をあげる。

 

*絆創膏

数枚巻くこともあるようです。

 

*苦いマニキュア

バイターストップというものです。通販サイトでも入手可能です。

 

*長袖

袖で指を隠すようにします。

手袋をしたりタオルで巻くというのもあります。

 

*器具

固定式と取り外し装置があります。

 

最後に原因についてですが、これまでは以下に挙げたような心理的要因のみで説明されてきました。

1)家庭環境からこの習癖の動機を探ることが多い。例えば;

両親が厳格、あるいは多忙なために子供が孤独感やストレスを感じて指しゃぶりを続ける。

下に兄弟姉妹が生まれたときに指しゃぶりを再び始めるケース。

 

2)母乳育児終了を受け入れがたい

母の乳首を親指に置き換えてこのニーズを満たしている。

最近、神経生理学的に解明しようとする研究が現れてきました。

指しゃぶりによって顔の神経が刺激され、筋肉のバランスと身体的心理的緊張の解放が得られるというものです。

指しゃぶりを止めさせたことによって身体的バランスが崩れ、心理的にも緊張が続くのであれば、止めさせる行為はちょっとマズイかもしれませんね。

 

3歳過ぎても頻繁に指しゃぶりするので止めさせようとする場合には、歯並びの重症度に影響を与える3要素が当てはまるかチェックして、止めるには何が最適な方法なのか探りながら(これが難しいので原因を考えながら行うしかないのです)

お子さんの体調、活動度、食欲なども観察しましょう。