感情や欲求をコントロールする「感情制御」は、
幼児期後期(4歳頃)にグーンと発達します。
この時期にみられる感情制御の発達は、
将来(成人期)の社会経済力や心身の健康と密接に結びついているようです。
個人の生涯にわたる身体、脳、心の健康は幼児期の感情抑制が大きく関わっていると言うことです。
ところで、幼児期の感情制御には大きな個人差があり、
それが何故かはよくわかっていません。
これまでの研究では、感情制御の個人差に影響を与える要因として、
家庭の経済状況や親の学歴などのいわゆる社会学的側面に注目が集まっていましたが、
幼児本人に何が差が出る要因があるのかは全くわかっていませんでした。
そこで、最近注目を集めている「脳―腸―腸内細菌叢相関」は感情抑制と関連しているのか?と言う話になります。
腸には
栄養や水を吸収する
ホルモンを分泌する
免疫の働きを担う
情報を伝達する
腸には多様な細胞が集まっていて、特定の腸内細菌がこうした細胞に機能を与えているようです。
成人を対象とした研究では、多種の腸内細菌の集団は身体の健康のみならず、
こころの健康(不安やうつ)にも関連することが示されています。
ここで重要となるのは、
個人が生涯もつことになる腸内細菌叢の基盤は生後3~5歳頃までに決まることです。
感情制御が顕著に発達する時期と一致します。
腸内細菌の安定と感情制御が関係してそうです。
そして、どのような種類の細菌が腸内に安定するかは食生活習慣に大きく依存しています。
感情制御を含むいくつかの認知機能が、
腸内細菌や食習慣とどのように関連するかを調べた研究が2023年に報告されました。
その研究の方法は、
3~4歳の日本人幼児257 人を対象に、便の採取を行い、腸内細菌の評価を行いました。
「感情制御」と目標のための計画を立てたり実行するといった「認知制御」や食生活習慣については、質問紙により評価しました。
幼児の機能の発達にリスクを抱える児(困難群)と、リスクを抱えていない児(対象群)の比較により、腸内細菌や食生活習慣の面でどのような違いがみられるかを検証しました。
結果は、
(1) 幼児期の感情制御の困難さがある群は炎症性疾患との関連が指摘される菌と関連している可能性がありました。炎症性疾患とは、物理化学的刺激や細菌・ウイルスの感染に対して起こす発熱・発赤・腫脹・疼痛を兆候とする疾患です。
(2) 「感情制御」に困難を抱える群では、一週間あたりの緑黄色野菜の摂取頻度が対象群と比べて低いこと、また、偏食の割合も高いことがわかりました。
(3)「認知制御」に関する発達リスクについては、腸内細菌叢や食習慣との関連は見られませんでした。
偏食と緑黄色野菜!
わかっていてもなかなか上手く出来ない事情がある家庭もあると思います。
ですから、幼児期の健康状態・食生活習慣が大人になっても影響しているってちょっと怖い気がします。
ヒトの感情制御の発達とその個人差が、腸内細菌叢、食習慣とどのくらい関連しているか長期的に検証していく必要がありますね。