お口の中にはおよそ700〜800種類の細菌が生息しているのですが、
その中で世間では、虫歯の元締め、悪の権化、悪魔の化身の如く恐れられているのが
ミュータンス連鎖球菌、俗称ミュータンス。
日本小児歯科学会は
「ミュータンス菌は養育者から子供に移るので、食べ物を口移しで与えたり、歯ブラシを共有することは避けたい」と提言しています。
また、キシリトールを一般に広めた日本フィンランドむし歯予防研究会は
更に踏み込んで
「同じスプーンを使用した際にもミュータンスは唾液を介して感染してしまう」と発言しています。
ミュータンスに感染したら虫歯になってしまうぞ!という脅しですね。
生まれたばかりの赤ちゃんにはミュータンスが住み着いていないと言われています。
では、いつから赤ちゃんの口に入ってくるのでしょうか?
2014年の調査によると、生後5ヶ月の子供60名中ミュータンスがあったのは2人、
60名の母親のうち54人にミュータンス菌はありました。
ということから、離乳食前はミュータンスの拡散は少ないようです。
どうも、流動食・固形物の食事開始とともにミュータンスの定着が始まるようです。
次は、2012年アメリカの研究です。
母子ともにミュータンスが見つかった2〜5歳児を調べたところ、
母からミュータンスをもらったのは40%、
母以外からのミュータンスを持っていた子供の割合は90%でした。
(ミュータンスは様々な型があるので、合計が100にはなりません)
日本小児歯科学会や日本フィンランドむし歯予防研究会の提言通りに
母親が口移しやスプーン・お皿の共有を避けたとしてもミュータンス菌の拡散を防ぐことはかなり難しいということです。
最後に、2012年スウェーデンの研究から。
むし歯予防プログラムに参加したグループ(67%の人たちにミュータンス菌)と100%ミュータンスがあったグループの19年後のむし歯経験の差はありませんでした。
ミュータンスがあったとしてもその後のケアで十分にむし歯予防ができるということです。
ミュータンスが口に入ったらすぐにむし歯になるなんてことはないんです。
お口の中でミュータンスが活躍できる環境をつくらなければいいだけです。
ミュータンスは空気が嫌いなので、隅っこの物陰に住み着くのです。
彼らの住処は、歯と歯の間、深い溝の中や厚く積もった歯垢の底の方です。
彼らの隠れ家はわかっているのです。
そこを綺麗に掃除しましょう。
ミュータンスが来たらどうしよう、なんて恐れることはないのです。
・ミュータンスの定着は流動食・固形物の食事開始とともに始まる
・母親が口移しやスプーン・お皿の共有を避けたとしてもミュータンス菌の拡散を防ぐことはかなり難しい
・ミュータンスがあったとしてもその後のケアで十分にむし歯予防ができる
・歯と歯の間、深い溝の中や厚く積もった歯垢の底の方を綺麗に掃除することでミュータンスの拡散を防止することが大切