反対咬合には3つに分けられます。
①上顎が小さい(下顎は大きくない)
②下顎が大きい(上顎は小さくない)
③上顎の前歯が内向き、下顎の前歯が外向きで反対の噛み合わせになる(上下の顎の大きさは関係ない)
今回は顎の成長量に左右される1と2についての矯正治療を述べていきます。
①上顎が小さい(下顎は大きくない)場合は装置を使って上顎を大きくします。
成長途中のある時点で10まで成長すべきところを例えば7までしか成長しなかった上顎を人為的に10まで広げることは可能です。
乳歯が全て永久歯になった頃に広げると確実に後戻りが起こり、仕上げの状態を維持することがちょっと難しくなります。
上顎の前歯が生え変わった頃に広げれば後戻りもなく骨は安定します。
歯を綺麗に並べる前に上下の顎を整えておくことが先決です。
②下顎が大きい(上顎は小さくない)場合は治療開始時期を定めるのが難しくなります。
例えば、成長途中のある時点で12まで成長している顎を10に抑えることは不可能だからです。
成長が止まっていないのに治療を進めてしまって、さあ終了です!となっても、そこからまた成長して下顎が前に出てきて何年か後で反対咬合に戻ってしまった、ということが起こり得ます。
そのような理由から下顎が前方に突出している反対咬合の治療開始時期は成長が終了してからになります。
そこで、成長終了の合図を見極めなければならないのですが、その方法として手掌のレントゲン写真があります。
また、身長の成長曲線からも判断できます。
レントゲン写真と身長測定、どちらが正確か?統計的にはそんなに差はないようですから身長でいいかなと思っています。参考材料は確認のためにも複数あった方がいいことは確かですが。
そこで、身長と顎の成長についてお話します。
思春期性成長期という時期があって、この頃に身長が大きく伸びます。
・女の子の場合は11〜13歳、上顎の犬歯、下顎の第一小臼歯が萌出する頃から始まります。
・男の子ですと一般に13〜15歳、上下顎の第二大臼歯が萌出する頃からです。
歯の萌出時期で言えば、女の子は上顎犬歯が萌出した直後、下顎第一小臼歯が萌出した後に最大発育時期が来ます。
男の子は上顎第二大臼歯が萌出する直前、下顎はすべての歯が萌出した後に最大発育時期が来ます。
(*これらは統計的にこういうことが多いということで皆が上に記したようになるということではありません。)
思春期性成長期を過ぎれば成長は鈍くなり、そして徐々に成長完了へと近づきます。上下顎の関係が良好な場合には、小学校低学年から思春期性成長期まで身長と下顎骨の成長は正比例の関係にあります。
この相関はかなり強いのですが、12歳以降になるとこの相関関係は低くなります。
身長の成長に対して顎の成長が追いつかなくなるのです。
思春期性成長期後も成長スピードの減少が認められないことがあります。
これをlate growthと言います。
下顎が大きい(上顎は小さくない)タイプの場合は12歳以降も身長と下顎骨の成長は強い相関を維持します。
late growthで下顎骨も成長するからです。
矯正治療開始時期を決めるためには思春期が終了しても身長を計測し続ける必要があります。
矯正治療では「後戻り」という反作用に対してマウスピースなど後戻りを防ぐ方法があります。
ところが、Late growthによる後戻りは防ぎようがありません。
それが、下顎が大きい(上顎は小さくない)タイプの治療開始には慎重にならざるを得ない理由です。