将来、大変な歯科矯正治療にならないようにするために何をなすべきか
これが予防矯正歯科のコンセプトです。
すなわち、正常な発育や噛み合わせに悪影響を与えそうな邪魔者を事前にキャッチして回避する方向に向かわせ、良好な状態を維持するように努めます。
まず、まだ永久歯が生えていない乳歯だけの時に、具体的な歯並びの問題を挙げる前に将来の歯並びに影響を与えそうな事項をチェックしてみましょう。
1)歯と歯の間の虫歯
虫歯で歯と歯の間に隙間ができると奥歯が前に寄ってきて永久歯の生えるスペースを小さくしてしまう恐れがあります。
定期健診、虫歯予防処置、タイムリーな治療で防ぐことが可能です。
2)顎の発達や歯並びに悪影響を与えそうな癖を早期に認識し排除に努めます
指しゃぶりなどの問題ありの癖は早期に認識しておきます。
(※指しゃぶりについては、2019年12月24日号の記事をご参照ください。)
3)乳歯の早期脱落
特に奥の乳歯が永久歯がまだ生えてこないうちに抜けてしまったらその抜けた空隙を維持する装置が必要になります。
4)なかなか抜けない乳歯
①乳歯の根っこが顎の骨とくっついて自然に抜けない(アンキロシス)
レントゲン写真で確認できたら永久歯が生えてこられるように適切な時期に抜歯します
②後継の永久歯が正常な位置に萌出できるように抜歯の可能性があります
5)上唇小帯
上唇の裏にあるひも状のものです。前歯の裏まで伸びていたら、前歯がすきっ歯になったり、歯並びがガタガタになる原因になり得るので適切な時期に切除します。
6)異所萌出
嚢胞(のうほう)や過剰歯、乳歯の根っこが早く吸収されすぎた、乳歯の根っこがいつまでも残っていたなどの理由で永久歯が違う場所から生えてくることがあります。その場合は必要に応じて原因の排除を図ります。
例えば、レントゲン写真を撮ってみて、もし第1大臼歯が手前に傾いていたら後から生えてくる永久歯の萌出スペースが小さくなってガタガタの歯並びの原因になります第1大臼歯の手前の歯になる第2乳臼歯のチェックや第1大臼歯をどうやってまっすぐにするか事前の計画が必要です。6歳の頃にレントゲン写真を撮れば、親知らず以外の永久歯が骨の中で作られ始めているので、おおよそどこに生えてきそうか見当はつきます。もし、傾いている永久歯があったら継続的な観察が必要になってきます。
7)舌小帯
舌の下側にある細いひも状のものを舌小帯と言います。発音や飲み込みに問題があるときは切除が必要です。
8)過剰歯
上顎の前歯の真ん中に過剰歯があると2本の前歯が離れてすきっ歯になってしまいます。そんなケースでは、永久歯が生えてくる前に過剰歯を抜く必要があります。
9)早期接触、咬頭干渉
左右均等に噛もうとする時、その前に何処かで最初に接触して下顎をズラしてしまうことがあります。これを早期接触と言って、削ったり、動かしたりして排除する必要があります。奥歯のズレが原因の時は特に咬頭干渉と言っています。
10)花粉症などのアレルギーや扁桃腺・アデノイドの肥大
これらの症状が悪化したり長く続いたりすると上下顎の噛み合わせに問題を起こすことがありますし、中耳炎や睡眠時無呼吸を引き起こすこともあります。
アデノイドの肥大マックスはだいたい5〜6歳くらいですが、それ以降に矯正検査時に撮るレントゲンでアデノイドの肥大がわかったら、唇や舌の筋トレ、持続的に鼻呼吸できるようにする、口呼吸をやめる、などのトレーニングが必要になることもあります。