しみず小児歯科のブログ
〜歯科医がお口のことを自由気ままに書いてみた〜
小児

エナメル質形成不全

6歳前後になって永久歯が生え始めてきます。

その歯の表面にまるで虫歯のように現れた白、あるいは黄色っぽい斑点に気づくことがあります。

これはエナメル質形成不全です。

特に前歯と奥歯に現れるエナメル質形成不全をMIHと言います。

奥歯・前歯に限局された形成不全の略語です。

一般にエナメル質形成不全と言っても、ほとんどがMIHです。

MIHは意外と多く認められ、日本では10%〜20%くらいの人にあると言われています。

MIHのうちで

わずかな変色(白、黄、褐色の変色)が80%

広範囲に変色があるケースが10%

エナメル質が薄くなっていたり、一部がなくなっているケースも10%

だいたい、このような割合で見つかっています。

MIHの問題点は

1)特に前歯の場合は見た目の問題

2)エナメル質が薄い、あるいは欠如していたら知覚過敏になりやすい

3)奥歯ではエナメル質が欠如していたらでこぼこになって歯垢がたまりやすく虫歯のリスクが高くなります。

4)6歳臼歯(きゅうし)が軽い変色だけならまだいいのですが、エナメル質が薄い、あるいは欠如があれば、強い力がかかるので欠けることがあります。

 

MIHの原因は

出生前因子:母体の疾患が影響を与えているか結論は出ていません。妊娠している時にしっかり栄養を取らないことで赤ちゃんの歯に白い斑点ができるという人もいますが、これは確かではありません
周産期因子:未熟児・帝王切開・出産時の合併症は低酸素症を引き起こす可能性があり、低酸素症はMIHリスクと関係性が強いとされています。
出産後因子:統計上、MIHと関連している疾患は麻疹・尿路感染症・中耳炎・胃腸障害・気管支炎・腎臓疾患・肺炎・喘息・発熱。
また、抗生物質の使用や高濃度フッ素の取り過ぎも統計的にMIH発生と関連しています。

 

以上、上に挙げた事柄がMIHとの関係性が高いのですが、実際にどのような作用を受けてMIHになったのかというところまでは分かっていません。

それで、歯を作ることに関係する遺伝子そのものに問題はないが、その遺伝子が何らかの影響を受けて歯を作るシステムが何らかの余計な作用を受けたのでは、という研究が行われいます。

また、MIHの多くは原因因子が複合的に作用しており、この因子の発生期間・強さ・発生時期が軽度な白斑から重度なエナメル質欠如といった度合いに影響しているのではと言われています。

 

原因として、乳前歯の外傷もあります。

特に強打して前歯が中にもぐった場合は乳歯の根っこが永久歯の芽を損傷することもあり、これは白斑の原因となります。

 

対処法として、

前歯の変色は十分な証拠はないのですが、CPP-ACP(カゼイン・ホスホペプチド、アモルファス・カルシウムホスフェート)が有効だろうと言われています。

商品名は「MIペースト」です。

白斑の場合はホワイトニングも有効です。

白斑が目立たなくなります。

エナメル質の欠如がある場合は、欠如がどの程度かによって治療法は変わってきます。

詰め物をする、被せ物をするなどでしょうが、健全な部分を出来れば削りたくないですね。

 

6歳臼歯は先に述べたように強い力がかかるので、崩れない方法を考えねばなりません。

MIHの場所・程度によって治療法は変わってきます。

永久歯は一生涯大事にしなければならないので、経時的な治療計画が必要となることもあります。

もし、MIHがあったらかかりつけの歯医者さんに相談してみてください。