1950年代の調べでは一人当たりの砂糖消費量と虫歯の多さは明らかに正の相関がありました。
「虫歯を作りたくなかったらお菓子を食べるな!」
なんて歯医者にどやされていた時代です。
ところが、今の日本は一人当たりの砂糖消費量と虫歯は無関係になっています。
日本より虫歯が少ないのに砂糖消費量が多い欧米はかなり以前から無関係を続けています。
・お口の衛生に気を使い歯を大切にするようになった。
・フッ素を利用するようになった。
これらが虫歯を減らした要因です。
今回は、丁寧に歯みがきできていない、
あるいは、デンタルフロスを毎日使って歯と歯の間も掃除していない人を対象にした話です。
口の中に棲むいくつかの種類のバクテリアが食事で取り込まれた糖から酸をつくります。
その酸によってpHが5.5以下になると歯が溶け出します(このときのpHを臨界pHといいます)。これが虫歯の始まりです。
一日3度の食事で糖分を摂ります。3度の食事ごとに酸がつくられて虫歯の危険にさらされるのですが、唾液が中和してくれるので歯は溶けずにすんでいる。この均衡(きんこう)が維持されていれば虫歯にはなりません。
*ご飯やパスタといったデンプンに関してバクテリアはそこから酸を作れないのですが、デンプンは口の中で分解されて酸の素になる糖になってしまいます。
ところが、間食ばかりしている、あるいは、スポーツドリンクやジュースのような砂糖たっぷりの飲料水をガブガブ飲んでいると、唾液が中和する前にまた酸ができて歯は常に酸に浸っているので、歯の表面にあるエナメル質はいよいよ溶け出してしまいます。
3度の食事では簡単に虫歯になりません。
問題は間食の回数です。
一人当たりの砂糖消費量と虫歯の関係はすでに破綻していますが、間食回数と虫歯の多さは関係がまだあります。
統計的には一日1回の間食は虫歯に無関係です。しかし、一日3回以上は非常に危険です。
間食は1回以内に抑えましょう。
どうしても複数回の間食を摂ってしまう場合は砂糖やデンプンの入っていないものにしましょう。甘味料としてキシリトール100%などシュガーレスは虫歯の危険性がグッと下がります。
*本来、間食は3度の食事で取り込みが少ないと思われる栄養素を補助食として取り込むことでした。ビタミンやミネラル(カルシウム、亜鉛、カリウム、鉄など)がメインになります。
それでは、実際にどのようなお菓子や飲み物が虫歯になりやすいか列挙してみましょう。
■100%フルーツジュース、100%野菜ジュースには糖分がたっぷり入っています。
天然物だから虫歯にならないってことはありません。
砂糖入りの飲料水と虫歯危険度は同じです。一日中飲みっぱなしは避けたいですね。
■砂糖入りの乳酸飲料・ヨーグルト類はやはり虫歯の原因となります。
しかし、健康のことを考慮したら摂取した方がいいだろうし、砂糖抜きの乳酸飲料やヨーグルト類はちょっと飲食に辛いものがあります。間食回数を減らすためにも、これらを食後のデザートとして扱ったらいいでしょう。
■昔、大学にいた頃、1×2㎜ほどのpHセンサーを口腔内に取り付けて、そこに歯垢をためて、どんな食べ物がpHを低下させるか実験していました。
お煎餅やお餅はpHが下がりにくい。
砂糖入りの飴はpHが下がりっぱなし。口の中にいつまでも残っているお菓子は危険です。
飴以外にも、砂糖入りガム、小さいからついつい幾つも食べてしまうグミ系・ラムネ系のお菓子、歯にひっついていつまでもその感触と味を楽しんでしまうソフトキャンディー系。
これらを一日中食べていたら虫歯の危険度急上昇です。
アイスやチョコレートはすぐに溶けるので下がったpHはだんだんと回復します。
一日1回の間食だったら虫歯の危険度は低いでしょう。
砂糖入りガムは最初にpHは下がりますが、唾液がたくさん出るのでpHがすぐに回復します。
それでガムを捨てると口の中にまだ糖分が残っているのでpHはまた下がります。それからゆっくりとpHが回復します。
ポテトチップスの主成分はデンプンなので煎餅同様に虫歯になりにくそうですが、ポテチは食べてるとペースト状になって歯と歯の間に挟まれやすいので、そこにいつまでも留まっていると糖に分解されて細菌によって酸が産生されます。
実際にpHを測定すると数時間5.0以下のままです。とても危険です。
砂糖が入っていないから大丈夫ってことにはありません。
クッキーやビスケットもポテトチップス同様に歯にくっつきやすいですね。
歯と歯の間の掃除は食べたその日の内に必ずきれいに掃除しましょう。
■寝ている間は唾液が出にくくなります。歯みがきしないで寝てしまうと唾液が中和してくれないので一晩中お口の中に酸がたまりっぱなしです。危険です!!